本年1月に開催されました調達価格等算定委員会において「2026年度以降の一般木質等(10,000kW以上)及び液体燃料
(全規模)のバイオマス発電がFIT/FIP制度の新規認定対象外となる」見直しが行われました。
本件の経緯について、下記に補足説明をさせていただくとともに、当協会の考え方も合わせて述べます。
結論といたしまして、一部の入札区分に該当する新規案件を除き、引き続きFIT/FIP制度による支援が継続されます。
●バイオマス発電の入札制の現状と見直しへの経緯
バイオマス発電はその燃料種類や設備容量規模により、入札区分が複数設定されており、本件の10,000kW以上の
「一般木質等バイオマス」及び全規模の「バイオマス液体燃料」においても2018年以降入札制となってございました。
入札の実績といたしましては、2022年度以降、応札件数が0件であり設備の新規認定は発生していない現状となって
ございました。そのため、今後の新規認定においても応札が見込まれないことから、支援の見直しが実施されたものと
考えております。
●バイオマス発電の認定済みFIT/FIP案件の今後について
バイオマス発電のFIT制度開始前の導入量と、2024年3月時点のFIT/FIP認定量を合わせた設備容量は1,070万kWとなって
おり、このうち導入量(稼働済の設備容量)は750万kWとなりますが、既に認定済みで未稼働の発電所についても、
今後もFIT/FIP制度の支援のもとで導入が進められます。
●稼働済みへの制度改正による影響
既に稼働している発電所については、今回の制度改正による影響はありません。また現在使用している輸入燃料に
関しても、本制度改正による影響はありません。
FIT/FIP制度におけるバイオマス区分は、下記の図(※FIT/FIP制度支援区分)に示す通りです。FIT/FIP制度の新規認定
対象外となった区分におけるバイオマス発電の導入計画については、「長期脱炭素オークション制度」「容量市場」
「需給調整市場」の活用が可能であり、FIT/FIP制度を活用しない新規導入に向けた計画も引き続き進められています。
燃料区分 | 発電出力 | FIT/FIP制度支援 | 調達期間 |
間伐材等由来の木質 | 2,000kW未満 | 継続 |
20年間 |
2,000kW以上 | 継続 | ||
一般木材・農産物の収集に伴って生じる固形燃料 | 10,000kW未満 | 継続 | |
10,000kW以上 | 2026年度の新規入札停止 | ||
農産物の収集に伴って生じる液体燃料 | —– | 2026年度の新規入札停止 | |
建築資材廃棄物 | —– | 継続 | |
一般廃棄物・その他 | —– | 継続 |
第7次エネルギー基本計画における2040年時点のエネルギーミックスでは、電力総需要が約1割増加すると見込まれる中、
バイオマス発電は全体の5~6%を占める電源として位置付けられております。そのため、引き続き再生可能エネルギーの
一翼を担う重要な電源として、大きな期待が寄せられているものと考えております。
一方で、今後のバイオマス発電においては、FIT/FIP制度からの段階的な自立化が求められます。これに向けては、2024年
10月30日の調達価格等算定委員会で当協会からお示しした通り(参考資料:「バイオマス発電の主力電源化・自立化に
向けた取組について」)、燃料等の費用低減と、新たな工夫による売上増加の両面で検討を進める必要があります。
売上の増加に向けては、発電が安定している再エネ価値を高く評価して頂ける需要家さまへの販売のほか、バイオマス
発電はベース電源としての稼働や調整電源としての運用が可能であることから、調整力ΔkW市場や調整力kWh市場での
活用が期待されております。バイオマス発電の特徴を活かしながら、今後も再生可能エネルギーの普及拡大における
重要な電源としての役割を果たしてまいります。
最後に、FIT/FIP支援終了後のバイオマス発電所において、石炭などへの回帰が生じることのないよう、当協会としては、
バイオマス発電所の自立化に向けた情報提供支援や、エネルギー基本計画におけるバイオマス発電の重要性に関する
普及啓発活動を進めてまいります。引き続き、関係者と連携し、持続可能なエネルギー供給体制の確立に向けて努めて
まいります。
一般社団法人バイオマス発電事業者協会
代表理事 中島 啓介